【高潮の原因】
「吸い上げ効果」と「吹き寄せ効果」により発生します。
台風は中心気圧が低いです。気圧が低いということは空気が軽いことになります。その結果。空気の重りが軽くなった分。海面の高さが高くなります。1hPa気圧が低いと、海面が1cm高くなるといわれています。 | 台風は暴風を伴うので、強い風に吹き寄せらて、風下側では海面が高くなります。湾の入り口から湾奥に向かって風が吹く場合は、湾奥の方が海面が高くなります。また、高波も打ち寄せてくるので、防潮堤の高さを上回ると被害が生じます。 |
※気象庁WEB資料を参考に独自に作画したもの |
【伊勢湾台風(1959年台風15号】
紀伊半島付近に上陸し東海地方を中心に甚大な被害を出した台風です。死者4697名、行方不明401名に及び、昭和の風水害としては、最大の被害となりました。
台風としては、典型的なコースで、日本への接近は予想されていました。 「非常に強い」勢力を保ったまま紀伊半島に上陸したこと、 高潮を発生させやすい伊勢湾の西側を通ったこと、 夜間に襲来したことなど、悪条件が重なり、被害が拡大しました。 ※気象庁台風ベストトラックデータ、天気図を参照しつつ、独自に作成した。 |
伊勢湾台風の浸水地域
伊勢湾岸の標高3m以下の地域は軒並み浸水被害に見舞われました。 日本では「ゼロメートル地帯」に404万人が居住しています。 例えば、防潮堤がなければ、江戸川区や墨田区などは、海になります。 ※国土地理院50mメッシュ標高、気象庁技術報告「伊勢湾台風調査報告 」を参考に作図した。 |
【伊勢湾台風被害の様子】
【高潮の断面図】
大潮の満潮時は海面が高いので特に警戒が必要です。 台風により気圧が低下し海面が持ち上がり(吸い上げ)、さらに暴風より海水が吹き寄せて湾奥での海水面が高くなります。 そして、高波が防潮堤を越えてきます。 伊勢湾台風の時は、海沿いのエリアは水田のところが多かったのですが、 大量の海水と貯木場の木材が集落を襲いました。夜間で停電しており、暴風雨の中での避難になりました。 高潮地域から避難した人へのアンケート結果が残っています。 「避難時の水位がどのくらいだったか?」というという設問に対して、 30㎝未満が103人、30~50㎝が18人、50~70㎝は2人、70㎝以上は0人でした。 水位が70㎝未満だったということではありません。70㎝以上の水位では助からなかったということを意味しています。 ※気象庁WEB資料などを参考に独自に作成したもの |
【東京湾岸の海抜高度】
東京~横浜の周辺を標高によって塗り分けてみました。 標高は東京湾の平均海面を基準(0m)としています。 東京の下町は、かつて地下水を大量に組み上げたため、地盤沈下を起こし、 平均海面より低い土地となっています(青)。堤防がなければ海になってしまいます。 京浜地区も標高3m以下の低地が広がっています。 わかりやすく説明すると、京急の海側は3m以下です。 (多摩川の三角州を除けば、かつては海だった)。 なお、埋立地の方が標高が高くなっています。 例えば、江戸川区で最も高いのは、埋立地に作られた臨海球技上場(16m)です。 浦安市で最も高いのは、東京ディズニーシーのプロメティウス火山(約55m)です 昔の地図(今昔マップリンク) 地理院地図(東京湾周辺) ※地理院地図をベースとして、標高別に彩色したもの |
【東京湾の高潮対策】
東京湾では、 過去最大の人的被害を出した 「伊勢湾台風」クラスの台風が 襲来しても 高潮の被害が出ないように、 標高7mの高さの 防潮堤網が作られています。 左の写真は、 運河の出口に設置された 巨大な水門です。 津波警報が出たり、 高潮注意報?警報が出ると、 水門を下ろして、 東京湾からの海水が 運河に逆流しないように しています。 ※平井史生撮影 |
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東京湾岸の倉庫の様子です。 写真の右側が東京湾、 写真の左側には 道路をはさんで 工場や倉庫などがあります。 塀は厚みがあって、 頑丈そうです。 緑色の鉄扉は、「防潮鉄扉」と 呼ばれるもので、 津波や高潮の危険がある 場合に閉められることに なっています。 大規模な高潮が発生したら、 この倉庫は浸水して しまうかもしれませんが、 それ以上 被害を拡大させないための 設備です。 ※平井史生撮影 |