球磨川豪雨(2020年7月3日~4日)

 

【球磨村渡地区の地形】

水位観測所の位置(KML)         地理院地図
人的被害が大きかった千寿園の場所は、
家型+杖記号の場所です。

人吉盆地で支流を集めた球磨川は、
再び山間部を流下することになります。
人吉市から球磨村に入ると、平地が少なくなり、
左右両岸に斜面が迫ってきます。
地図の渡駅付近は、狭窄部となっています。
    
球磨川右岸の堤防について、渡駅付近に注目すると、
地図の堤防の位置と、標高値の彩色(薄い水色の部分)がズレています。

地形図では、鉄道や道路などの線情報が近接している時、
ずらして表現されることもありますが、
ストリートビューなどをみますと、川幅を広げる工事(引堤?ひきてい)が行われた様子です。

また、地形図では、本流?球磨川に対し支流?小川が直角に合流するようになっていますが、
小川左岸堤防を延長する形で2014年3月導流堤が完成していたようです。
本流の増水の影響が支流に及び支流があふれやすくなる「背水現象」を
抑制する目的で作られましたが、河川の排水能力を超える大雨となってしまったことで、
効果を十分に発揮できなかったようです。

水位観測所が多く置かれています。洪水の危険が高い地域で、
じっくり水位が監視される場所であると思われます。

 

地理院地図3Dで作画したものです(高度彩色凡例は前図と一緒です。)
新聞社の空撮写真等から、渡小学校も千寿園も泥水に覆われたことが確認できます。
図中水色の範囲がほぼ浸水したものと考えられます。

千寿園の背後には山が控え、名もない沢の開口部から泥水が流れ出した可能性があります。
また、千寿園脇の小川が増水して溢れたことがわかっています。
最終的には球磨川本流も増水して、谷底平野全体が泥水に覆われました。

【球磨川の水位】


球磨村渡地区の水位の変化をグラフ化したものです。堤防の天端(てんば)が±0となるようにしてあります。
水位観測点の場所は地図で示しました。
球磨川本流については、午前5時頃から堤防を越えてあふれ出したようです。
千寿園?渡小学校に近い②小川橋付近でも6時頃から堤防を越えたようです。

マウスを重ねると、午前3時を±0としたグラフになります。
午前5時頃までは、4か所のグラフがほぼ重なります。
午前5時以降は、②小川橋のグラフだけ傾きが急になっています。
支流である小川から大量の泥水が流れ込んできたのかもしれません。
あるいは、鉄道橋?国道橋に漂流物がたまってダムのようになり、水位が急激にあがったのかもしれません。

②小川橋付近の水位は4時から5時までは約1m高くなり、5時から6時までは一気に2m高くなりました。

千寿園の浸水状況について、
「午前5時頃、隣を流れる球磨川の支流は、堤防付近まで水かさが上がっていた。」(朝日新聞7月5日18時20分ネット記事)
「午前5時頃、水はホームの玄関までせまり...」 (東京新聞7月6日0時29分ネット記事」
「4時50分頃、千寿園周辺の道路が冠水してたどりつけない」(西日本新聞7月5日6時ネット記事)
「午前5時頃、水はホームの玄関までせまり...」 (東京新聞7月6日0時29分ネット記事」
「6時半頃、建物内にはまだ水が入っていなかった」(朝日新聞7月11日8時ネット記事)
「6時前後から手分けして入所者を2階に誘導」(毎日新聞7月31日16時5分ネット記事)
「施設2階への本格的な避難を開始したのは6時半頃」(日経新聞7月28日20時41分ネット記事)
「7時頃、渡り廊下のガラスが割れ、水が流れ込んだ」(西日本新聞7月5日6時ネット記事)


 

国土交通省の河川監視カメラです。球磨川と小川の合流点付近の様子で、本流と支流の区別がつかない状況で濁流に覆われている状況です。撮影時刻はわかりませんが、停電等により画像配信が止まる直前のもので、おそらくは7時過ぎではないかと思います。
(平常時の画像を入手できたら、比較のため掲載する予定です)。

 

国交省の河川監視カメラの様子です。水位観測点「渡」付近です。撮影時刻が不明ですが、停電等により画像配信が止まる直前のもので、おそらくは7時過ぎと思われます。
画像は「川の水位情報」から取得しました。平常時との同位置比較のために、切り取り加工しています。

 

次のページ